「恋は一発逆転」

 

平成25年夏。藤原拓也24歳。北九州市小倉北区に位置する従業員100人程が働く製薬会社北九州支店。拓也は営業課に大学卒業後就職してから2年目になる。美咲早苗29歳。入社7年目の仕事はベテランである。初デートの約束にこぎつけた。拓也は、LINEでは、ズバッと言えたり話せるのに、直接会って話すと、ネタが浮かばないでいる。別れ際に今度は、8月の花火大会に行こうと約束?休憩所で会話して、ちょっと1時間ぐらい散歩して菖蒲を見て写真を撮ったデート。拓也は、LINEで、思い切って早苗に聞いてみた。

「恋人になって下さい」早苗「そんな気ないわよ、友達でしょ私を落としてみせる。おやすみなさい」

新日本三大夜景に選ばれ北九州だけでなく日本を代表する皿倉山。ケーブルカーもあり山頂まで簡単に登れ参道は手をつなぐチャンス。

「あの〜手を繋ぎませんか」

「いいわよ」

拓也は全身の力が抜けた。

「あの〜キスして」いいですかとは言えなかった。

「拓ちゃんどうしたの。汗一杯かいて、はい、ハンカチ」花火も打ち終わり拓也は時計を見ると午後10時を過ぎている。拓也は早苗の住んでる小倉へと車を走らせ足立公園に向かった。小倉の綺麗な夜景が見渡せる場所である。この日の夜は少し肌寒い感じで拓也は展望台で暫く夜の小倉を眺めている。その時、一瞬の隙を突いて拓也は、自分の着ている上着を脱いで、彼女に着せる瞬間、早苗が身体を寄せ合ってきた。瞬間に拓也は早苗の唇を盗んだ。それは、無数の星がいっぱい輝いて見える足立公園での出来事であった。

「本当は、その後に、ホッペをぶたれるかと思ったよ」それから数日が過ぎた。恋愛のマニュアル本を読むと、デート3回目にはやっちゃえとある。待ち合わせ場所は小倉駅だ。早苗はバスで来た。拓也は、ピンク映画を観に行こうかと、いきなり、早苗に問いただした。

「えっ」

早苗は嫌と言った。拓也は困った顔をしたと同時に、拓也はとんでも無い事を早苗さんに口走ってしまった事を一瞬後悔したがすぐさま気を取直した。

「星の王子様と私を観ようか」

「はい」

2人は映画館に入っていった。次の日会社へ出勤すると早苗は拓也に対して、ムスッとしている。拓也は軽々しい発言を悔やみ謝ろうと昼休みにLINEで呟いた。

拓也「失礼な言葉ごめんなさい」早苗「もうLINEしないで下さい」拓也「俺ね、早苗さんが理解出来ない、LINEしないで下さいってそれ近寄らないでという事」早苗「私は藤原さんが理解出来ませんけど」拓也「会社で話せるようになるまで、俺、会社休みます。それにもう辞める」

早苗「私はこの会社辞めませんよ。この会社が好きだから」                                           拓也「次の文句が打てないや」早苗「これで、お別れです、さようなら」

思い付きで、ポンポンLINEしてた拓也は、取り返しのない事態になってしまった。拓也「これで、きっぱり辞められます」

早苗「お疲れ様でした」暫くしてから拓也はまた打った。

拓也「このリスクは原子爆弾並みです」早苗「さようならしたはずですけど」

拓也「また最初からやり直そうかと」早苗「もう、会う事はないよ」

拓也「そうですか」早苗「私の携帯番号消して下さい」「藤原さんの携帯番号、電話する事ないので解除しました」

拓也「最後に、まだ、会社辞めてませんから、それと悪気はなかったです」

早苗「そうですか」「私との関係は無くなりました」

次の言葉に、拓也は、無意識の内に、綱を辿っていた。

早苗「もう、好き同士じゃなく友達に戻りました」

「お付き合いは、なかった事にして下さい」「早く退職届けを出したらどうですか」

「早苗さんじゃなくて、美咲と呼んで下さい」この言葉を最後に、拓也の携帯のLINEから、早苗が、ブロックしてきた。

早苗は一昨日の拓也との出来事を浮かべながら。ここは小倉ロイヤルホテルのフロアにいる。そこへ母が父と共にやって来た。2人は娘の門出を祝う時の様な満々とした笑みを浮かべている。一方の早苗は何か浮かぬ顔だ。三人は桜の間に案内される。その部屋には身長180センチ程の細身の身体の質素な雰囲気のする真面目な第一印象の男性38歳が座っている。これから2人のお見合いが始まる。縁談の話は二週間前から進められていた。早苗は拓也とのLINEでブロックしたのは、ちょっとした意地悪な気持ちになりやってしまった。本当は拓也とのデートは嬉しかった。昨日は何も連絡はしなかった。

拓也は小倉一のジュエリーショップに来ている。店員に70枚の札束を渡すと。手の中には、ハート型のティファニーのダイアモンドが今や今かと箱の中から出してくれと小さな声が拓也に囁いているようだ。店を出ると拓也の愛車の姿はない。昨日、突然の衝動で愛車を売り払い。お金に変えた。その足で小倉ロイヤルホテルに向かう。早苗がお見合いすると友達から聞いた。ブロックされた翌日。拓也の咄嗟に思いついた行動だ。

お見合いを終えた2人とお互いの両親はロイヤルホテルの待合室でタクシーを待っている。そこへ大きな叫び声が聞こえてきた。拓也だ。その手の中にはしっかりとティファニーのダイアモンドが握り締められている。

あれから3ヶ月が経ち2人はロイヤルホテルで近いの言葉を、そして早苗の左手の薬指に結婚指輪がはめられ2人の唇が重なり合った。

 

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社長になるの

社長になるの

 

美久は、上品さの雰囲気をかもしだしたブルーカラーのスタイリッシュコートに優しげな雰囲気のブラウンのパンツ。大人っぽくなった感じ。龍太郎の思考に美久と腕を組んだ。姿が蜃気楼の様に流れた。その場所の設定を間違った。ジョイフルのランチにエスコートしたのを後悔する。さらに困った。ハンバーグ定食じゃ、このお膳立てが台無しだ。思考は次の行動を模索するが。昼間だ。カラオケなどと言ってはさらに。ドツボにハマる。美久にお酒はと尋ねると、えーと心地よい返事が返ってきた。すぐさま、生ビールを注文する。美久の目ん玉を見ると。驚いてる感じがする。しまったと感じるがもう遅い。生ビールがやってきた。お互いの手がいきなりジョッキを握り。一気に飲み干した。美久の頬が赤色に変色している。しばらくぶりに飲んだビールだ。少し酔いが回る。龍太郎「美久ちゃん。散歩しようか」ここは、酔いを覚ます必要がある。タクシーを呼び、車で10分の海浜公園へ走る。海浜という名前だが。山の麓に位置する。美久は窓の外を見ている。この設定はドツボだ。前日にデートのシュミレーションをしておくべきだった。美久「あの時のメッセージの場所ね」この言葉で、緊張が吹っ飛ぶ。美久は。このメッセージを私が呟いてから、LINEから、既読の文字が消えて、二年と言う月日が流れたのであった。タクシーを降りると、友達の言葉が頭をよぎる。50を過ぎたら、デートとか恋愛を楽しむ事は考えない。やばい、美久もそんな感じを頭に浮かべているのだろうか。身体の先の手のひらがもじもじと脈を打ってくる。その時。美久が手を握ってきた。龍太郎の身体に電流が走る。友達の忠告と違う。奴の見解は間違っている。いやまて、私の思考が誤作動してるのか。額から汗が落ち始める。その指の中はまるで、強力な磁石の様だ、なかなか、離れない。次の言葉が浮かんでこない。私「ここが昔。約束した場所だね」美久がうなづいた。びっくりした。この場所で美久と散歩するのはいつも夢の中に現れるシーン。美久も知っていたのだろうか。

夢の中には、ベンチに座っている高校生のカップルが抱き合っている。さらにさらに額から汗が流れ落ちてくる。その時。美久がハンカチを差し出して。笑みをこぼした。あの時の夢を美久は知っているのか。汗を拭った。次の言葉が出てこない。肩を叩こうとした瞬間に話し声が聞こえてきた。気がついたら美久を引き寄せて、美久の顔が近づく、もう、外部の声は遮断された。太陽の光が、ふたりの重なる額に強烈な光をぶつけた。そして、一瞬だった。美久の口元を奪う。さらにさらに汗がしたたり落ちる。

龍太郎は昨日の余韻が残っている。身体は熱があるようにぽかぽかとしている。美久とすれ違うが挨拶をしただけで。そそくさと事務所の中に消えた。あれやこれやと想いが湧いてくる。美久は会社の同僚だ。それに長く。LINE交換していても。大半は一方通行のメッセージ。美久の事は何も知らない。龍太郎は現場で事務所に行く用事はあまりない。

二年前を思い出す。美久は22歳で入社してきた。新入社員だ。龍太郎47歳。初日の事だった。「LINE交換しませんか」龍太郎は昔。出会いサイトにハマってしまい。会話を楽しむだけで。直接会う行動には至らずに。ブームは終わった。

ひとりで品質事務所で仕事をしていると、扉が開き、美久がやって来た。すかさず声をかけると、鼻をつまんで、一言。「会社では秘密です」そこへ同僚の沙織が入ってくる。沙織は龍太郎が美久に気があるのは知っている。まさか、LINEを交換しているとは思いもよらぬ。沙織は、今度の飲み会。相席してくれますと尋ねる。すると。そばにいた美久のハイヒールのカカトが。龍太郎の靴紐をぶっちぎった。公園での出来事以来、いつもの美久と違う。それまでは、何食わぬ顔での職場内。オフィスラブの展開だった。しかし。靴紐をぶっちぎってから。美久はふたたび、LINEで、音信不通になってしまう。3日が経ち。一週間が経ち、そして。1ヶ月。美久とは顔を合わせる。挨拶もする。会話もする。なのに、LINEについては、ノーコメント。龍太郎もやっと。異常な関係だと思い始める。朝礼で会社の経営が傾きかけてると課長の言葉が頭をよぎる。若い連中は山梨県にある本社へ出向する人材選びが始まる。従業員はうすうす感じていた。最近の仕事の大半は敷地内の草むしりがあったり、女性人の作った。ぜんざい会があったり。美久さんが、見合いをしたと、なんでも。結納を交わした。そんなはずはない。秘密の交際をしている。龍太郎は噂の出所が気になる。そんな中で、自ら。転勤を希望する。 龍太郎は既読のつかない、LINEを毎日、日課のように呟く。そして、届かないLINEで、誘いをかける。「お昼の15時に。鶴屋デパートの近くの辛島公園で待っています」公園には1時間前に着いた。人影はまばらだ。5分おきに鼓動に激しく揺さぶられる。15時を過ぎ。日がくれてきた。美久は、デパートの駐車場から見ていた。その場所へはやってきたが。龍太郎は気が付かない。龍太郎は待ち望んでいるのに。来るという信念がなかった。LINEで電話をかけるなんて。思い浮かぶことはなく。公園を後にする。近くにいて遠い。毎日顔を合わせる。なのに、まともな会話をしないんだ。何を、LINEで呟いている。龍太郎には痛恨の秘密があった。この会社に入社する前に、不思議な声を聞いた。その時は何が起きたのかと自分自身を疑った。その後、ふとしたきっかけで。聞こえないものが聴こえる。幻聴と言う。病気だと悟る。精神科に出向くと、精神薬を服用された。この精神薬を服用した事を悔やんだ。もう。子供を、産めない身体なのか。もしも。結婚して子供が出来たらと思うと、罪悪感に悩まされ続けている。美久に何と説明すればいいんだ。声が聞こえるとは、普通の人間にはありえない事である。龍太郎は美久に直接。コミュニケーションするのが、本当は怖い。無意識で逃げている感情が一方通行のLINEの意味だ。このまま、山梨に転勤していいのか、後悔はしないのか。出発の日がやって来た。空港に沙織の姿があるが、美久の姿は見えない。沙織は龍太郎に一通の封筒を渡した。そして。一言。「飛行機が飛んでから読んでね」その姿を見ていた課長が。バンザイを三唱した。龍太郎の脳裏には美久の顔が浮かぶ。今日は、昼から重要な会議が予定されていて、旅立つまでは残り5時間ある。同僚達が帰ってから、龍太郎は沙織から頂いた封筒をあけた。そこには。メッセージが添えてある。「未来の社長さん」その言葉を聞いた瞬間に、龍太郎の身体が熱くなった。急いで、スマホのLINEを開き。美久に。届くかわからない。メッセージを送る。「美久さん。一緒に山梨へ着いて来てくれ」咄嗟の思いつきだ。送信すると。いてもたってもいられない。あと5時間しかない。30分して、突然。スマホのバイブレータがなる。着信は美久からだ。「一緒に行ってもいいけど。社長になるの」龍太郎は、勢いに乗り返事を送る。「社長になる」出発。30分前に。龍太郎の視界に入って来たのは。走ってくる。美久の姿だった。

 

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